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太鼓の"鉄人"~僕がバチを鍋に入れる時~

hitabon 
2011.07.05   [日記]


巨大太鼓 / kanonn



「それでは本日のテーマ曲を発表致します。本日のテーマ曲はこれだ!」

スタジオ内に音楽が突然かかる。この明るくて、ノリノリの曲は、そう、あの曲。

「Yeah! めっちゃホリディ」

絶妙に古い。どんな意図を持った選曲なのだろうか…。いけない、この雰囲気に飲まれてはだめだ。肝心な事を聞きださなければ。

「すいません、ルールを教えてください」

私の発言に、華やかな衣装の男が答える。

「本日のルールはいつもと同様。テーマ曲で太鼓の達人を叩いてもらいます。ゲームの点数、演技力、技術力が総合的に判断されます。審査員は3人。20点満点で採点して頂きます」慣れた口調で淡々と彼は答えた。
「さあ、それでは始めましょう。挑戦者のご健闘をお祈り致しております。アレ・キュイジーヌ!!」

「さあ始まりました。太鼓スタジアム。実況は私、深井がお届けいたします。おっと、まずは鉄人、駆け出したぞ」

青の衣装の鉄人、馬場八三郎がステージ前へと駆け出す。よく分からないが、負けじと私も後を追う。彼の向かう先には、横2m程はある巨大な木製の入れ物に緑色の葉が敷き詰められ、その上に大量の太鼓のバチが置かれていた。

「まずは鉄人。先にバチを選んでいます。今日はどのバチで演奏するのか!?ここで挑戦者も追いつく。2人ともバチを慎重に選んでいます!!」

違いが分からない。どのバチも木製のありふれた物にしか見えない。そもそもバチなんてどれでもいいのでは。鉄人馬場の動きを横目で見る。どうやらバチの微妙な曲がり具合や、左右の重さの違いをチェックしているようだ。私も見よう見真似でバチを選ぶ。

「鉄人、バチを手に取りましたた。すぐに自分のブースへと戻ります。それを追って挑戦者。同じく自分のブースへと戻ります」

自分のブースには、アーケード用の太鼓の達人が一台置かれていた。恐らくこれをプレイすれば良いのだろう。画面を見ると既にクレジットが1/1になっている。お金を入れる必要がないようだ。取り合えず、ゲームをやってみよう。僕はスタートボタンを押・・・

「おっと?どういうことだ、挑戦者!?プレイを開始してしまうのか?」
「え?」

思わず僕はスタートボタンから手を離した。何だ、まだ始めてはいけなかったのだろうか。隣のブースの鉄人馬場を見る。太鼓の達人の隣に設置されたキッチンの前に立っている。どうやら、巨大な寸胴にお湯を沸かしているようだ。

「さあ、鉄人。いつもの様にバチを煮沸消毒だ!」

くそっ。どんなローカルルールだ。しかし、煮沸作業も採点に入るのだろうか。寸胴にすぐさま水を入れ、僕も火をかける。

「挑戦者。どうやら、ここでようやく煮沸作業のようです。煮沸作業を忘れていた模様です」
「ぷぷぷ」

馬場が私を見て鼻で笑った。なんだか、ちょっと悔しい。知らなかったとはいえ不覚だ。お湯が沸く。すぐに僕はバチをお湯の中に入れる。

「あぁ!?なんという事でしょう。挑戦者、バチをお湯の中にそのまま入れていますよ!塩は入れないのでしょうか?」

煮沸って言ってたじゃないか。塩を入れるって、これはパスタでも茹でているのか?太いパスタなのか?極悪なアルデンテなのか?
鉄人馬場を見ると、そんな僕の失態を肩を震わせて笑っている。
負けられない。あいつは負けられない。言われるがまま、僕も鍋に塩を入れ、バチを茹でる。

「さあ、ここで両者ようやくバチが茹で上がりました。」

実況もいつの間にか煮沸ではなく、茹でると言っているのは一体どういう事だろうか。茹で上がったバチを僕はザルにあげる。

「熱っ」熱湯を吸い込んだバチは、とても手で持てる状態ではなかった。どうする。一度水で冷やすべきなのだろうか。横目で馬場の様子を伺う。

「あっつ!!あっついわ、これ!!あっつ!!」

どうやら彼も熱いようだ。勝手に水で冷やして減点されるとかなわない。仕方なく、熱々のバチを僕も手に取る。

「あち」
「あっつい!あつ!!」
「あついあついあついあつい」
「くっそあつい」

お笑い芸人の素質でも図っているのだろうか。僕と鉄人馬場の声が太鼓スタジアム内にこだまする。 のたうち回り、熱湯を振りまき、絶叫を上げながら、バチを掴もうと懸命にもがく。

~BGM 「時代」中島みゆき~

ようやくバチが手に持てる程冷めた時には、僕も馬場もぐったりしていた。根こそぎ体力を持って行かれた気がする。

「はぁはぁ…いよいよ実技か…?」

馬場を見る。彼は、優しい笑みを作り親指を立てこちらに付きだした。何だか分からない一体感を僕は馬場と感じ取っていた。
この一見無駄に思えた、熱湯バチを持つ行為。…やっぱり無駄だったと思うが、少なくとも彼との友情を芽生えさせるには十分だったようだ。そうだ、俺達はこのバチを持つために生まれてきたんだよな?太鼓を叩くために今まで頑張ってきたんだよな?そうだよな?鉄人、馬場八三郎?

しかし次の瞬間、鉄人馬場は笑顔のまま立てた親指を下に向けた。そして憎らしい笑みと共に、こちらに向けて首を掻き切るポーズ。

くそ。許さない。あいつだけは絶対許さない。
僕は、バチを力一杯握りこみ、目の前に置いてある太鼓の達人を見据えた。

これからが本番だ。

たぶん…

太鼓の"鉄人"~僕がバチを片手に世界の愛を束ねる時~」へ続く

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コメント

No title

そろそろ更新しているかしらと楽しみにしていたけれど
残念。

 なにがあったのかしら???撤退してしまうかしら?
好きなブログが、終わってしまうのは好きなバンドが解散した時みたく
淋しく、・・・・。仕方の無いことと解っていても。

 出版準備とかならいいんだけれど。

No title

sakanannakaさん

こんばんわ!
いつもありがとうございます。

更新遅くてすいません。
撤退はしないです!

今は夏休み中で時間も多少あるので、
今日は寝て(笑)、明日、明後日でブログ書いてみます!

No title

こんばんは。

続きは?
ねえ、続きは?
・・・うずうず。

No title

今日は頑張ります!もうしばしお待ちを!

(すいません、コメントが承認待ちになっているのは、新規記事の投稿が一ヶ月以上ないためと思われます)
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