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どうして僕が要求不満と高らかに声を上げるようになったのか

hitabon     
2011.05.17   [日記]



 
 電気信号が混線した状態の脳を椅子の背もたれの頭頂部に載せた。私は天を仰いだ。白く濁った蛍光灯の傘を、小さな虫が無言で何度もその体で突ついていた。体から立ち昇る入浴剤の香は、先程まで体に纏わり付いていた豚肉と生姜が焼けた匂いを、すっかり洗い流してくれていた。
 1歳の次男の夜鳴きが隣の部屋から響いてきたかと思うと、すぐに治まった。私は、今の自分の心情を何と表せばよいか考えていた。部屋の中は、原因と結果、そして過去と現在が複雑に交錯している。
 しかし、何度考えても答えは一つだった。今の心情、それは。

 最近、次男の自我の芽生えが著しい。子を持つ親としては非常に喜ばしいことだが、同時に今まで以上に手が掛かるようになる。こちらから与える物を今までは素直に受け入れていた。今や自分の意向にそぐわないものは拒絶する。
食べる物。遊ぶ玩具。進む方角。
 出来るならば彼の思うとおりに事を運ばせてあげたい。しかし人間社会で生きていく上ではそうもいかない。
食べ物で遊んではだめ。本を破いてはだめ。そっちは行ってはだめ。
 こちらの拒否反応には、さらに拒否反応で返す。そんな彼の様子を見て、少なからず心に鬱憤が溜まっているだろう、と私は感じるようになっていた。

 一時間程前、泣き叫ぶ次男をあやしていた妻に、私は言った。
「次男はきっと要求不満なんだろうね」
一瞬、間があった。その間の意味するところを私は理解出来なかった。
「え?」ようやく妻が返答を紡ぎだした。
すぐさま私は言い直す。
「いやだから、次男は要求不満なんだと思うよ」
「え?もう一回言って」
奇妙な空気が部屋の中をは這いずり回っている、このとき私はそう感じた。目の前にいるのは妻であって、妻ではないどこか遠くの国の異人のようも見えた。
「要求不満なんだってばよ」
NARUTO風に更に言い直してみたが、妻は眉間に皺を寄せ考え込んでいるようだった。
しばらく間が空くと、妻が私に言った。
「それって、欲求不満のこと?」
「え?」今度は私が妻に聞き返した。
「もしかして、欲求不満のこと、要求不満だと今まで思っていたの?」
大声でぐぅと叫ぼうとしたが、もはやぐぅの音も出なかった。

 私は、パソコンの前に駆け出した。賃貸のアパートの床がぎしぎしと歪んだ。そして、キーボードの上に乗っていた手紙や子供の玩具を、ゴリアテの無線を傍受したドーラのごとく、右腕で薙ぎ払った。パソコンの起動ボタンを押す。起動画面がこれほど煩わしいと思った事はなかった。
 ブラウザを開き、備え付けの検索窓に「要求不満」と打ち込みエンターキーを押した。検索結果の先頭部分を見て、私は目の前が真っ暗になった。

次の検索結果を表示しています:欲求不満. 元の検索キーワード:要求不満


 今までの人生を否定された、そんな思いが頭を過ぎる。
 いや、まだだ。先程の検索結果の"要求不満"のリンクをクリックして、再び検索結果の先頭部分を見た。

もしかして:欲求不満


 様々な想いが湧き上がっては、頭の中で激しい閃光と共に消えていった。"ようきゅうふまん"と"よっきゅうふまん"。"よっきゅうふまん"と"ようきゅうふまん"。今まで私の周りにいた人間は本当に"よっ"と発音していただろうか。"よう"だったのではないだろうか。いやそれよりもまず、欲がなぜ"よっ"なのか。何故軽い会釈のような発音なのか。小さい"つ"はどこから来たものなのだろうか。何由来成分なのか。天然か人工か。兎にも角にも疑問は尽きなかった。
 
 椅子に座ったまま私は考える。今の自分の心情を何と表せばよいかを考えていた。
私は気づく。この気持ちこそが"要求不満"ではないのかと。
 混沌とした日本社会。我々はより良い明日を作るために更に高い要求を掲げねばならない。飽くなき要求、そして満たされることのない渇望。これが日本を再生するための唯一の手段なのだ。そして、それこそが要求不満なのだ。
 街で燻ぶっている若者達に言いたい。君達の欲求不満を要求不満へと昇華させるのだ。思い通りにならないこの世界から、私達は時に逃げ出したくなる。限りない人の欲求に、私達は時に辟易する。しかしその不満のベクトルを違う方向に向けるだけで、世界は音を立てて回り始める。欲求ではなく、要求。欲を捨て、この世の要(かなめ)となる礎を求めるのだ。

 私はそのために次の事を皆様にお約束したい。まず、欲求不満の欲の小さい"つ"に関して。今年度中に段階的に廃止していきます。新しい読み方は"よきゅうふまん"となります。小さい"つ"に頼らない欲求を我々は世界に要求していきます。
 次にただ今挙げました、欲求不満と要求不満に関して、義務教育課程に組み込みます。具体的には、小学校、中学校の義務教育において合計週5時間の授業を課します。内訳としましては、欲求不満が週3時間、要求不満が週2時間となります。授業内容の詳細については、外部の専門家の意見も取り入れまして今後詰めていきたいと思っております。
 最後に言論の自由に関して。こちらは2020年度までに、今回の欲求不満と要求不満のような言葉を間違えたとしても、嫁から馬鹿にされない世の中を、必ず、実現させたいと考えています。もしこのような事を行った場合は、最大で5年の禁固系に処す法律も併せて策定していきたいと考えている所存です。
 
 以上が我が党のマニフェストであります。

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コメント

No title

つい最近まで 汚名挽回って言葉を普通に受け入れてた自分が居ます
よくある間違いですよねw
とりあえず、、1票入れさせて頂きますw

No title

昨夜まさにマトウバの話でもりあがってました。
 走馬灯の事をマトウバと信じてた子が
漢字にしたら同じじゃない?とかなんとか・・・

要求不満のほうがちょっと上品な感じはしますね。

コメソトありがとうございます

雅さん
汚名挽回は確かに間違い易いですねぇ
「オメー卍解!」
ってブリーチに出てきそうだな、といま突然思いつきました(すいません、今ちょっと熱があって正常な思考が出来ていません)

sakanannakaさん
マトウバ…
どう読めばそうなるのか、ちょっと分からないですね^^;
上にも書きましたが、今熱がありまして、先程からマトウバが見えます…

小さい『つ』の廃止よりも『欲求不満』を『よくきゅうふまん』と解釈させるのが先だと思います(笑)

コンソメありがとうございます

RINGOさん
次の選挙ではRINGOさんと争うことになりそうですね…お互い頑張りましょう
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