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世界のみんなにありがとう3

hitabon    長男  次男 
2010.10.13   [日記]



最近、生後7ヶ月の次男が"お座り"をするようになってきた。

しかし、お座りが出来るようになったと言っても、時よりバランスが上手く取 れずに倒れてしまうことがある。前に倒れる場合は自分の足に頭を突っ込む状態になるのでそれ程の問題はないが、後ろに倒れる場合は後頭部を打ってしまうた め危険が伴う。我が家は軽微な衝撃を吸収するマットを敷いており、そこに子供達を遊ばせてはいるものの、出来る限りそのような事態は避けなれければならない。

あの日、細々とした夕食後、次男は居間でお座りの練習を一人していた。嫁は台所で後片付け、息子は次男から少し離れた所でお気に入りのプラレールで遊んでいた。私は次男が倒れそうな時はいつでもサポートに入れるよう、次男の傍で成り行きを見守っていた。

突然長男が私に話しかけてきた。

「お父さん、この線路を繋げてよ!」

長男の方を振り向くと、青い線路を2本私の方に突き出し催促をしていた。どれどれと私が長男の方に近づき、腰を降ろした、まさにその時。

次男が床めがけて、ゆっくりと後ろに倒れだした。彼の目は驚きのあまり、真ん丸に見開いていた。

しまった!!

次男までの距離はおおよそ3メートル。だが、まだ間に合う!私は左手を自分の前方に出し、勢いよく床に手をついた。バン!と激しい音。そしてその手を軸に、右足を蹴りだし体ごと前方に飛ぶ。

闇に包まれた世界はぐわんぐわんという音が鳴らしながら、ゆっくりと時が流れている。

掴め、掴むんだ!お前のその手は何のためにあるんだ!
既に次男の頭は正常にお座りをしていた頭の高さから半分の位置、30cm位まできていた。

駄目…なのか!?
体に力が入らなかった。それでも、私は体をねじり、右手を前方に突き出した。僅かながらでも距離をかせぐためだ。
あと…少し…あと少しで…息子が…!!!

次男の頭は床まで残り僅か15cm。

「おぉぉぉぉぉぉぉ」

私の咆哮が部屋中にこだました。
叫び声と共に体全体を使って、次男目掛けて飛び込む。

私の手が届くのが先か!?頭が床に衝突するのが先か!?
全ては……

今!!!!!

部屋中が静寂に包まれていた。
立ち上っていた砂煙が風で舞う。
その中から現れたのは、妻と次男。

次男は天井を見上げ、きゃっきゃと笑っていた。
そして彼の体は、妻によって抱きかかえられていた。

少なくとも…私は間に合わなかった……

 妻は心配そうに私に言う。
「大丈夫……?だって、あなた昨日から何も食べて…」
そこまで言い、口を閉ざした。私は必死で笑みを作ると、窓の外の暗闇を黙って見つめた。

 異変が起きたのは2週間前の早朝だった。初めて”それ”に気がついたのは長男。
「ねえ、お父さん。お空から黒いものが沢山降ってきてるよ」
その言葉で、ベッドで眠っていた私と妻は起こされた。私は眠い目をこすりながら起き上がり、長男に笑いながら話しかける。
「お空からは、そんなものは降ってこな…」
窓の外を見た私は、一瞬にして体の全機能が停止した。頭の中で何かが激しく警鐘を鳴らしている。私の後ろで同じようにそれを見た妻の悲鳴で、私の心臓は再び動きだした。

 空から"黒い何か"がしんしんと降っていた。

早朝だというのに空は漆黒に覆われ、10月にも関わらず真冬のような寒さ。空から降ってきているあれは、色こそ違えど、形状や降り方から考えると、雪と表現するのが最も適しているようだった。その後、TV、ラジオ、携帯電話等、外界との接触を行う機器は全て、通信が出来ない状態になっていることが分かった。また、幸いにも最も重要なことをこの後すぐに理解することになる。
 窓から外を見ると、大勢の人々が家の外に駈け出していた。彼らは空から降ってくるそれらを物珍しそうに見上げた。そして、彼らはそれに触れると、すぐさま苦痛に顔を歪め地面にうずくまっていく。
 妻はその光景を直視できずに泣きながら目をそらした。私は事の成り行きを見届ければならない、そんな思いでその惨状を見続けた。一分…いや二分位苦しむと、痛みが収まったのか、苦しんでいた人々はゆっくりと立ち上がった。みな頭を垂れいて、表情は確認することが出来ない。そして足を引きずるようにして、全員何処かへゆっくりと歩いていった。まさに、映画のゾンビさながらの光景。しかし、大きく違ったのは、目の前の彼らは、他の何にも目をくれず、只々どこかに向かっているようだった。それ以外は自分の家族や恋人でさえも何も認識できていない、そんな様子だった。眼前で起きている出来事全てが理解の範疇を超えていた。私達はしばらく家に留まり状況を観察することを選んだ。そしてそれは、この狭いアパートの一室の中に閉じ込められることを意味していた。

 あれから2週間が経っていた。状況は何一つとして好転していなかった。空は朝も昼も関係なく暗闇に覆われ、例の雪は程度の差はあるものの降り続いてた。ただ、これだけ降り続いているにも関わらず、2,3cm程度しか積もっていない。そして連日のように、我慢できずに外に飛び出て行く人々が、あれによって変えられ、何処かへと向かって歩いて行った。もはや見慣れた光景、と言っても過言ではなかった。
 現状の私達の問題点は、言うまでもなく食料。日に日に減っていく冷蔵庫の中身や保存食品。残り僅かな食料を少しでも節約するために、私は昨日から絶食し、その分を妻や子供たちに与えていたのだった。
「もう私達も、世界も終わっちゃうのかな…」
妻の問い掛けに私は答えられなかった。今まで何度も家族に希望を持てと鼓吹してきた。だが、もう私自信も限界だった。妻は居間で無邪気に遊んでいる子供達に聞こえないように、ひっそりと私に告げる。
「食料なんだけど、、いずれにしてもあと2,3日で尽きるよ。。。」
もう迷っている時間はなかった。その晩、私はある決意を胸に眠りについた。
 暗闇で覆われた世界は、全ての人を飲み込むかのように、静かに空から黒い刃を撒き散らしていた。

 次の日

 私は玄関でブーツのひもを締めていた。全身をレインコートで覆い、手袋をはめた。そして頭からは透明なゴミ袋を被り、完全に外界と接しない完全防備の状態だった。妻が心配そうに私に問いかけた。
「本当に行くの?」
私は大きくうなづいて答える。
「今のままじゃ、どのみち餓死してしまう。僕が状況をみて、食料をもらってくるよ。大丈夫。ここ数日注意深く観察した限りでは、直接体に触れない限り、あの症状は発症しないようだから。実際、こんな格好で歩いていた人も見たからね」
子供達も心配そうに見ていた。長男は嫁を見上げて、不安げな面持ちで尋ねた。
「お父さん、どこに行っちゃうの?」
言葉に詰まっていた嫁に変わり、私は長男の頭を鷲づかみして答えた。
「お父さん、美味しいものを沢山もらってくるからね」
長男はぱっと笑顔になり、頷いた。そしてまだ7ヶ月の次男の頭をぽんとひと叩きした。
「お前も、お母さんの事を守ってやるんだぞ」
次男がタイミングよくあうあうと笑いながら喋りだした。妻が思わず吹き出した。私もそれを見て声を出して笑った。
「じゃあ行ってくる」
先に家族を奥の部屋へと入らせ、私は玄関を開けた。強烈な冷たさが体全身を襲った。世界は私が思っていた以上に変貌を遂げていた。夜と形容するには、あまりにも全てが暗すぎた。レインコートごしに触れる黒い雪に冷たさと恐怖を感じ、震えながら駐車場へと向かう。それらは直接には何の感触もなかったが、さながら四方八方から鋭いナイフを突きつけられているかのようだった。何とか車に滑り込みエンジンをかけた。エンジン音が唸りをあげる。よかった、車は無事なようだ。私は家族のいるアパートを一瞥した後、ハンドルをきつく握りしめアクセルを踏み込んだ。

 目的地は近くの警察署だった。あそこなら、誰かしら人はいるだろうし、有益な情報が得られる、そう考えていた。かつては片側2車線で、一日中交通量の多かった道路。今はこの暗闇に覆われ先の見えない道路を、私一人が占有している。時折、例の黒い雪の影響を受けた人々が、頭を垂れ道路の上をゆっくりと歩いていた。彼らは明らかに普通の人間とは異なっていた。ある意味では、生きているのか死んでいるのかすら、私には分からなかった。それでも轢いてしまわないように慎重に車を進める。そして、何人か彼らを見ているうちにある事に気づいた。アパートの窓から外を眺めていたときには分からなかったが、どうやら彼らの行き先は一定ではないようだった。
 車のラジオのチャンネルを試しにまわしてみる。予想通り、どこも放送は行われていない。私がラジオの電源に再び手を伸ばした瞬間、それは聞こえた。
「この……ウイ…スは……ハ…ルン……けっし……」
そしてそれ以降、何度選局しても何も聞こえかった。一瞬聞こえた単語の欠片が妙に耳に残った。それは子供時代に聞いた何かだった気がした。それより、どこかで生きていて、電波を流してる人がいる。この事実は私を勇気づけたのだった。

 4階建ての古く大きな警察署の建物が、車の窓ガラス越しに見えてくる。予想に反し、建物は明かりが点っておらず、黒い空と雪の中、そこはあたかも廃墟を思わせた。入り口付近には十数台の車が乱雑に止められている。私と同じことを考え、ここにやって来たであろうことな想像に難しくなかった。ただし、どの車にも既に人は乗っていない。車を止め、慎重に降りる。容赦なく風が吹き付け、私のコートに黒いそれらを突き刺した。生きた心地がしなかった。これが少しでも身体に触れようものなら、私もさっき見た人達のように……そんな事になったら、残された家族はどうなってしまうのだろうか……そんな思いを必死に振り払い、勇気を振り絞って、一歩、また一歩と力強く前に歩みを進めた。
 警察署の自動ドアは私を待ち構えていたように開いていた。中に入り、私はすぐに理解する。ここには誰もいないであろうことを。警察署館内はどこかで水が滴る音が断続的に鳴り響いおり、それ以外は何一つ聞こえてこなかった。エントランスの奥には深緑色の大きな掲示板。大きな白い用紙にテープで貼られており、そこには手書きで文字が大きく書かれている。
【黒い雪 ウイルスの一種 激痛 何処かへ歩き出す】
最後の部分”何所かへ歩き出す”に二重線がひいてあり、赤いペンで乱雑に一つの単語が書かれていた。
【ハーメルン】
ハーメルン…?ラジオからもこの単語が聞こえたきた気がする。確かグリム童話で語られていた、笛の音で……
からん
突然、後ろで何かが転がった音がした。私は急いで後ろを振り返る。そこには一人の少女が膝を抱えうずくまっていたのだった。

早送り>>

少女により警察署内で起きた惨劇が語られる。そして多くの人々がどこに行ったのか、有力な情報を得ることが出来た。再び車に乗り込み、少女と共に地下鉄の駅へと向かうのだった。
<序章:完>




ハーメルン







シーンスキップ>>

1章「始まり」
黒い雪が降る一週間前。
友人と裏山で遊んでいた高校生。そこで二人はある物を発見する。
次の日、その友人が失踪したことが知らされる。

2章「見えない意思」
国立科学研究所で深夜まで働いている女性研究員。
彼女の元に例の雪の一報が届けられ、すぐに調査に乗り出す
寄せられる感染者の行動パターンを調べて行くうちにある事実に気付く。

3章「希望」
hitabonは多くの人々が避難している地下鉄の駅に辿り着く
何とか食糧をわけてもらうことに成功し、家路につく
しかし家で待っていたのは非情な現実だった。

4章「追跡」
妻を追いかけるhitabon。
道中、1章の高校生、2章の研究員と出会い、互いの都合上、協力し合うこととなる。
ようやく妻を見つけるも。。。

5章「pay the piper」
ウイルスの真の正体が明らかになり、妻を…そして世界を救うために、全てを解決する鍵を追い求める
遂りついた先で、彼らがみたものとは。

終章
荒廃した世界で、家族と共に明日への希望を誓う。

>>再生

辺り一面から拍手が沸き起こった。

ありがとう。。。
ありがとう。。。
ありがとう。。。

世界のみんなにありがとう。





※この日記は以下の日記の二次創作です
世界のみんなにありがとう

※セルフパロディ版はこちらです
世界のみんなにありがとう2


ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界 (ちくま文庫)
阿部 謹也
筑摩書房
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おすすめ度の平均: 4.5
5 歴史の研究は、常に物言わぬ群衆を見据えていなければならない。
5 世界に誇れる研究
5 良書とはこういう本です
5 読み物としても楽しめる一冊
5 想像力をかきたてられた


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コメント

No title

hitabonさんの 頭の中を 覗いてみたいww

結末は 一つじゃないですね。。。

まだまだ 何通りもの作品が 生まれそうw

とうとう

ここまで…
脳内炸裂…
バイオハザード…を……ぁあ
ありがとう!

No title

飛躍しましたねぇ…
 
降り続けてるのに積もらない「黒い雪」その正体が気になりますw
やっぱり奥様の扱いg(ry

No title

朝にチョットだけ見るつもりが全部読んで遅刻寸前w
ゾンビ系好きとしては本で読みたい作品ですよww

こういう話では医者か研究員は外せませんねw




No title

気になる・・・。
この話の続きがぁ~。
モヤモヤモヤモヤ。。。
今晩寝れなかったらhitabonのせいだ!!(笑)

いや、「黒い雨」が夢にまで出てくるかもしれません。

おお、シュールだ!

hitabonさん、あの次男さんの後ろ姿の写真からこの物語が続いているのだとしたら、これはすごい能力ではないですか!? 超をつけてもいいかも。

ハーメルンの画像と息子さんの後ろ姿にグッときました(笑)

気になって×2…

途中まで読んで、気になって仕方なくて、会社の外に出て、ケータイを凝視です。
次回作が待ち遠しいです。

No title

ハーメルンの画像に思わず吹きました^^文章と風景がとても合ってます!
続きがとても気になります!

コメントありがとうございます

この話は、3連休に実家へ向かう車の中で考えた話なので、詳細は考えていないですww
ただ、これだけは話しておきたい事が!!pay the piper意味はお分かりになりますでしょうか?
意味は、
・費用[責任]を負担する.
・(愚行などの)報いを受ける.
という意味ですね。由来は、ハーメルンの笛吹き男の話の中で、男に対して正当な報酬を与えなかったために、子供をさらわれるという報いを受けたことから来ています。
そんなこんながありまして、5章「pay the piper」とハーメルンが繋がっている訳ですね。本作品において、報いとは何か!?そして何処かへ連れていかれる人々はどうなるのか!?それは私も知りません(笑)
(いくつか考えたのですが、いまいちすっきりしなかったので)
基本はハーメルンの童話と実世界との融合を描いたもので、童話の裏(実はハーメルンは実話説とか)を知っているとより深く分かるお話になったらいいじゃない!って思って考えました

みゅうさん
>>まだまだ 何通りもの作品が 生まれそうw
本当はあと2パターン続けるつもりだったのですが、しつこいので止めますww

みかすけさん
初代PSで初めてバイオハザードやったときの、OPムービーの衝撃は忘れられないです

マッキさん
>>降り続けてるのに積もらない「黒い雪」その正体が気になりますw
むしろ、私もその正体が何なのか気になりますw

雅さん
>>朝にチョットだけ見るつもりが全部読んで遅刻寸前w
長くてすいませんww
自分でいうのもなんですが、今回一回分のブログ更新にかける情熱がおかしいですね

ときこさん
是非、続きを書いてください!ww

ときは今さん
>>あの次男さんの後ろ姿の写真からこの物語が続いているのだとしたら
うちの息子の背中は、何も語らずとも周りが自然と語ってしまうのですね。。。

mackyさん
ハーメルンのバイオリン弾きっていう漫画が昔あって、好きでした
(毎回、どうでもいい話をコメント返信に挟んですいません)

猫尾美月さん
>>会社の外に出て、ケータイを凝視です
そこまでして、ありがとうございます^^;
私は自分のブログを携帯で見たこと無いのですが、ちゃんと見れているのでしょうか?

優月さん
是非続きのイラストを書いてください!!ww
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