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白い涙が舞い降りる中で

hitabon 
2013.02.20   [日記]



 ゆき。
 そう聞かれ、皆さんは、誰を思い出すだろうか。

 柏木由紀、YUKI、兵藤ゆき、小柳ゆき。または、自分の周りの「ゆき」という名の人物。皆一様に、想い入れの深い人物であったり、関わり合いのある者を、思い浮かべたであろうと思う。

 さて、本日の日記は、今思い浮かべた「ゆき」という名前の人物に関して、この後、全く関係がないので、取り敢えず忘れてもらって結構である。

 これからの話は、四方を壁で囲まれた、会社内の給湯室に、突如として舞い降りた「雪」に関して語りたいと思う。

 本日の朝の僕は、この上なく体調が悪かった。体温は測りさえしなかったものの、もしそうしていたなら、目盛りがK点超えをしたであろう事は、想像に難しくなかったのだが、そもそもK点のKとは何であろうか、という事を、Wikipediaをろくに調べもせずに、一心不乱にキーボードを叩く程の、意識の混濁も見られたのだ。そうは言っても、いざ会社へ出かける時間となると、パブロフの犬のごとく、時計の針の音に反応し、僕の中に渦巻いていた熱は、過ぎ去った時間のごとく消えていき、これが会社によって飼いならされた本物の犬なのだ、と確信に至る程なのである。されども、日中の更なる体調の悪化を恐れ、僕は昼休みに飲むための風邪薬を、会社へと持っていったのだ。

 某所で購入したゴムの塊のような物が雑多に盛られた唐揚げ弁当を平らげ、持参した風邪薬を持ち、僕は給湯室へと向かった。給湯室は、僅か1畳程度のスペースで、給湯器や、電子レンジが設置されており、毎日昼休みともなると、未だ垢抜けない様相をした女子社員達が、きゃっきゃきゃっきゃと桃色の声を上げているのだが、僕がその輪に入ろうと試みるものなら、皆蜘蛛の子を散らすように、故郷へ荷物を纏めて帰っていくのが常である。本日も、いつものように人払いをしたところで、僕は風邪薬を取り出した。
 
 それは粉薬だった。映画版デビルマンと粉薬を比べたならば、ぎりぎり粉薬が上回る程、僕は粉薬が嫌いだ。あの喉を通る時の不快感は、「あー、俺、デーモンになっちゃたよー」と、渋谷のスクランブル交差点で、叫ばなくてはならぬ行為に匹敵する程である。ただし、今日は違った。僕はオブラートを持ってきたのだ。妻が朝、僕の粉薬嫌いを案じて、薬と一緒に渡してくれたのだ。僕は妻に誓った。必ず、かの邪智暴虐の粉薬を除かなければならぬと決意した。僕にはオブラートがわからぬ。僕は、村の牧人である。笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども粉薬に対しては、人一倍に敏感であった。と、某小説の冒頭を拝借させて頂いたが、僕は、オブラートを使うのが初めてだったのだ。

 そうは言えども、それほど難しいものであるはずがない。所詮は、老若男女、誰にでも使える便利グッズの一つであるはずだ。オブラートを観察してみる。非常に単純であった。それは袋状になっており、明らかにそこに薬を格納し、後は飲み込めばいいはずだ。僕は、すばやく準備を整えると、熱湯を捻りだし、そこに冷たい水を加え、薬を飲むのに適したお湯をこしらえた。後は飲むだけだ。オブラートに包まれていれば、もう錠剤とほぼ同じようなものだ。僕は、それを舌の奥の方に優しく置くと、すぐにお湯を流し込んだ。ところがどうだろう。オブラートは舌にへばりついたまま、喉の奥に流れて行こうとしない。喉に絡まったそれは、更に気道を塞ごうとする。どうにもならなくなった大量の粉薬は、僕の舌の上で、まさに今、その凶悪な白き闇の翼を広げようとしていた。

 もう駄目だ、そう観念した時だった。

 給湯室に、白い雪が舞い降りた。白銀に輝いたそれは、給湯室内に優しく降り積もった。後には、涙を流し、嘔吐く僕が残った。



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コメント

再び…

これは大爆笑でした!!
笑っては失礼なんでょうけど
笑ってしまいます

あたしもオブラートで包まれた薬を飲むのは苦手です
それなら涙流しながらでも、粉薬一気飲みします
その方が覚悟が出来てるから(笑)

コメソトありがとうございます

はじめましてです。

薬を飲むのは何歳になっても嫌なものですよね。オブラートに関しては、家に帰り、説明書を読んだのですが、一度軽く水に付けてから、口に入れるようですね。そうしないと、大変な事になってしまうって、もう知ってました…。
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