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ちよこれえとの涙は、どこか辛く

hitabon 
2013.02.14   [日記]



 妻を持ち、子供を養っている身である私にとって、2月14日といふものは、いつしか、それほど特別視する程の日では、なくなってしまった。

もう此処何年も、ちよこれいとと言う洋菓子は、この日、妻からしか頂いていない。女の子でも授かっていれば、不恰好なそれを手作りして、ぴんく色のりぼんと一緒に渡してくれていたのかもしれないが、息子達は世の女性方から、頂戴する側であり、今年に至って長男は、一緒に幼稚園バスに乗っている女の子からこれ貰った、などとのたまいながら、嬉しそうに小さなクッキーが入った透明な袋を、私に見せてくるのである。その程度ならまだしも、父はいかほどのちよこれえとを会社で貰ってきたのか、と質問さえしてくるので、私は、父はお前たちを産んだ反動で、ちよこれえとを口にすることが出来なくなった、だからいらんのだ、と人差し指の爪に挟まったゴミを掬い出しながら、説明したりする。

 さて、実際に私の会社では、至極当然と言うべきか、2月14日だからと言って、特別な出来事は何一つ起きはしない。朝起きて、通勤して、インターネットを見て、昼食を食べ、昼寝をして、帰る、これだけ。ただ、しかしである。冒頭で私は、もはや何も期待しておらぬ、と言うような記述をしたが、私は、やはり男性か女性かと言えば、紛れもなく男性であり、常に奇跡を信じる、友情に熱い、逆転ファイターとして、広く知られているのだ。私は、今日という一日、一瞬足りとも気は抜かなかったのである。女子社員とすれ違う時は、歩幅を緩める心遣いを見せ、給湯室では番を先に譲り、話しをする時には1オクターブ上げて話をした。

 定時になり、会社を出る時に、私が手にしていたものは、何一つなかった。会社の敷地を出て、一番初めの交差点を右に曲がる時、私は一瞬立ち止まった。もしそこに誰かが立って、私を待っているとするならば、衝突してしまう危険性があるためだ。角をゆっくりと曲がる。冷たい風。私は一人また、歩き出す。

 家のマンションの前で、再び立ち止まった。どこで知り得たのか分からないが、昨年入社したばかりの女子社員が、私の家まで来てしまっており、赤い手袋、大事に包を抱え、僕の顔を見上げた、という事が起きても大丈夫なように、心構えはしっかりしていた。私の家のドアまで辿り着く。私の自転車が倒れていた。

 たかがちよこれえと。されどちよこれえと。どうしてこうも、私の心を亀甲に縛り上げるのだろうか。そんな、切なさと、エロティシズムに飾られた2月14日も、残すところ、あと一時間。どうか、皆にも覚えていて欲しい。布団に入り、目を瞑り、意識が霞んでいく中でも、私は諦めない。寝室の窓を突き破り、血とリボンの赤で染まったそれを、私に命からがら渡してくれる、その誰かが来ることを期待して、枕元にハーブティーを用意して、本日は就寝したいと思う。


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